拝啓　春暖の候　貴家益々ご清栄の段大慶に存じ上げます。 とは申せ、昨年の東日本大震災による甚大なる被害につきましては、心より御見舞を申し上げる次第でございます。 　さて、歴史を垣間みますと、大天災・大戦乱の後には必ず復興が訪れ、より素晴らしい時代を迎えていることに気付かされます。私たちは、その先人の知恵と勇気を受け継ぎ、ピンチをチャンスと捉え、血のにじむ先輩たちの努力に学ばねばなりません。 近年、茨城県は、立派な業績を残された人物41名を選び、同じように高萩市でも三傑を選出しました。そのどちらにも赤水先生は選ばれております。 人は亡くなれば歳月の流れとともに忘れ去られてゆくのが世の常です。しかし、それとは逆に時代とともに輝きを増し、有名になっているのが赤水先生です。 先生は、享保2年（1717年）11月6日赤浜村（現茨城県高萩市）に生まれ、幼年時代に父母と死別し、継母の手によって育てられました。幸いにも、恵まれた才能と良き師良き友に巡り合わせ、襲い来る不幸をバネに刻苦勉励、よく万巻の書を読破し、更には当時思いもよらぬ長崎までの大旅行（往復3か月余）に参加して、異文化に直接触れるという体験者となりました。農民学者赤水は日本地図も作り、それらが郡奉行に認められ、推薦されて水戸第六代藩主徳川治保の先生となったのです。 全国から情報を集め、天文学も研究し、２０数年をかけて作った日本地図は不朽の作品であるばかりでなく、版木にかけて出版し日本中に普及させた業績は不滅です。なぜなら、赤水の新刻日本輿地路程全図（1775年発刊）、改正日本輿地路程全図（通称赤水図、1780年発刊）は、伊能忠敬の大日本沿海輿地全図（1821年実測図完成）に先がけること約半世紀。しかも伊能図は防衛上発刊禁止で、幕府要人のみが知るところでした。これに対し、明治を迎えるまでの内憂外患のあの激動期を含めた約百年間、志士たちや一般庶民も携帯し、大いに役立ったのが赤水図だったからです。なお、「世界に広がる赤水図」として、東京大学大学院馬場章教授は、欧米の各国立博物館や各大学に、37枚の赤水図が大切に保管されていることを発表されております。 更には、ひそかに世界地図も作成出版して、日本の位置姿を知らしめる役にも立っております。 赤水先生は、江戸時代後期の、日本における地図の権威者でしたが、それのみか「農民疾苦」の上書を藩主に提出、弱者農民いじめの農政を命がけで改善させたりもしております。 その他、「大日本史」の地理志編集には生涯を通して活躍され、85歳（満83歳）で天寿を全うされたのです。 最近「江戸時代が日本人を作った」と江戸時代が見直されるようになりました。奈良時代にインド仏教が日本化されたように、江戸時代には儒教をはじめ多くの中国文化が消化吸収され人物を生んでいるからでしょう。赤水先生は江戸小石川の水戸藩邸の中枢にあって、その大きい歯車を回転させていた一人だったのです。このような先人を誇りとし、心の拠り所として朝な夕なに仰ぎ見ることが出来れば、こんな嬉しいことはありません。 この度、その銅像制作をお願いしましたところ、当代一流の彫刻家能島征二氏が快諾して下さいました。能島先生は、日本芸術院会員、日展常任理事、日本彫刻会常任理事、茨城県美術展覧会会長などの重責を担われております。現在水戸市に住まわれ、13年前には「徳川斉昭・七郎麻呂（慶喜公）像」を千波湖畔に、10年前には「水戸黄門さん像」を水戸市南町に建てられております。 また、銅像の題字は、茨城県を代表する書道家で高萩市出身在住の佐川倩崖先生にご快諾いただきました。 なお、赤水先生像建立場所は、常磐線高萩駅西口のロータリー中央が第一候補地です。若し首尾よく完成建立の暁には、次代を生き抜く多くの少年少女たちに、無限の勇気と活力と感動を与え続けてくれるに違いありません。 時あたかも赤水先生生誕三百年を目前にして今年は龍年。天の時により地の利を得、あとは人の和あるのみです。 つきましては、出費多端の折、誠に恐縮ではございますが、本趣旨にご賛同くださいまして、浄財の御寄付を賜わりますればこの上ない喜びでございます。 　　　誇りかに赤水像をうち建てむ　復興のシンボル未来への遺産 　最後になりましたが、皆様のご多幸と御尊家のご繁栄をご祈念申し上げます。　　敬具
　　平成24年4月1日
　　　　長久保赤水先生銅像建立実行委員会 実行委員長　皆川敏夫

顧問
　　茨城県知事/橋本昌　水戸市長/高橋靖　日立市長/吉成明
　　北茨城市長/豊田稔　福島県いわき市長/渡辺敬夫
　　東京大学大学院教授/馬場章　学習院大学文学部教授/荒川正明
　　映画監督/松村克弥
　　茨城キリスト教大学文学部学部長(教授)/東海林宏司
　　高萩市長/草間吉夫　高萩市議会議長/吉川道隆
　　茨城県議会議員/小田木真代 　高萩市教育長/菅波洋平
実行委員長
　　皆川　敏夫
副実行委員長
　　若松健一　長久保源蔵
実行委員
　　江尻光昭　　神永久米男　　野口不二子　横山功
　　作山正雄　　作山寿男　　石平光　　　八巻恒男
　　桂木なお子　山田成　　　佐川春久　　鈴木栄
　　細金秀隆　　杉本優子　　生田目至　　長久保和良
　　長久保甫　　仲内豊造　　長久保徹

　　順不同・敬称略